さて、連休最後に石見の長歌も訳してみます。
つのさはふ 石見いはみの海の 言ことさへく 辛からの崎なる 海石いくりにぞ 深海松ふかみる生おふる 荒磯ありそにぞ 玉藻たまもは生おふる 玉藻なす 靡き寝し子を 深海松ふかみるの 深めて思へど さ寝し夜よは 幾何いくだもあらず 這ふ蔦つたの 別れし来くれば 肝向きもむかふ 心を痛み 思ひつつ かへり見すれど 大舟おほぶねの 渡わたりの山の 黄葉もみちばの 散りの乱まがひに 妹いもが袖 清さやにも見えず 妻隠つまごもる 屋上やかみの山の 雲間より 渡らふ月の 惜しけども 隠らひ来れば 天伝あまづたふ 入日さしぬれ 大夫ますらをと 思へる我われも 敷栲しきたへの 衣ころもの袖は 通りて濡れぬ(2-135)
GPT先生と一緒に読み解きました♪
角(つの)が立つほど
荒々しく、霊の立ち上る石見の海。
昔からの言い伝えでは、
この辛(から)崎のあたりは
海の深くまで海松(みる)が青く茂り、
荒れた磯には
玉藻(たまも)が揺れていたという。
その深い海の藻のように、
私もあの人のことを
深く、深く思っている。
あの玉藻の柔らかな揺れのように、
魂が寄り添い合ったあの人——
一緒に眠った夜は、
本当に束の間だった。
這う蔦(つた)が
ゆっくりとほどけていくように、
私はこの地と、
あの人を残して
別れてきてしまった。
胸の奥の肝(きも)まで
痛むほどに。
別れてからというもの、
道の曲がり角ごとに
何度も振り返ってしまう。
けれど、
大舟が渡る“渡りの山”へ来るころには
もう、
あの人がいた里が
どんどん遠くなり、
紅葉が散り乱れる山の色に混じって
あの人の白い袖さえ
見分けられなくなった。
山の上を流れる雲の切れ間から
月がわずかに姿を見せる。
あの光を
惜しく思うけれど、
月はやがて
雲に隠れてしまった。
もう、
石見の“霊の光”は消えていく。
そして、
空の端(天伝い)から
日の光が伝わってくる——
夕陽が沈みかけている。
太陽の世界、
大和の現実が
私を呼び戻している。
大夫(ますらを)——
強くあるべき男の私でも、
袖を伝って
涙がこぼれてしまう。
どんなにこらえても
この別れだけは
どうすることもできないのだ。