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市川崑監督作品 その5『炎上』をみる

さて、市川崑監督が文芸を映画化した作品を観ます。


1964年

三島由紀夫の『金閣寺』が原作です。

人間の不可解な深層心理を描きます。

市川雷蔵演じる吃音症の青年の主人公の演技が、自然すぎてすごいです。

雷様と呼ばれたスター役者が、オドオドと自信なげでコミ障でとてつもない深い闇を抱えている。

この闇の深さそのものが、「驟閣寺」(しゅうかくじ、金閣寺の映画での名前)を放火する衝撃的な行動の動機だと納得してしまいます。

三島由紀夫も絶賛の演技だったそうです。

放火の原因を回顧的に描いていますが、それぞれのエピソードは小さなことにみえて、それでそこまでするのか?と思ってしまいます。

が、この青年にとっては一つ一つのエピソードが深い傷になっていく。
心の深部にグサグサと刺ささっていく。

尊敬する老師に失望した頃から自分の世界に入り、妄想が強くなっていきます。

誰にも理解されない孤独感、絶望と投げやりと復讐心、自己誇示…が放火をおこさせます。


映像美に酔う時間もない、緊迫したカット。

文芸とはこういうものだなぁ、と感じた作品でした。