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市川崑監督作品 その8『野火』をみる

さて、大岡昇平原作の『野火』をみます。


1959年


名作といえど残酷な重苦しい戦争映画なので、観はじめるのに時間がかかりました。

敗戦直後のフィリピンのレイテ島が舞台。
日本軍は食糧も弾薬もなく追い詰められています。

主人公田村一等兵役、船越英二さんの爛々とした眼光が印象的です。
戦争のストレスと病気のせいか言動が少し変です。
英語やフィリピン語も分かるので、学はあるようだが少しトロい。
鈍いと思いきや、時々鋭い洞察をします。


爆撃、食糧難、心身の疲労のギリギリの状況。
その時々を生き抜く本能だけで行動します。

田村は教会の十字架を目指します。

十字架の首輪をした地元民を銃で殺してしまいます。
人殺しを嫌になったのか、銃を捨てます。(またどこかで別の銃を拾います。)
靴も捨てたり、拾ったり行動に一貫性がないギリギリの状態。



日本軍と合流し、日本に帰還できるというパロンポンを目指します。
しかし、米兵がいてたどり着けません。

やがて人肉を食べる仲間をみて、生理的に受け付けない領域を自覚します。


最初、田村は黒い煙を敵のゲリラ隊の合図の狼煙と思って怖がりますが、最後はその煙を求めて銃撃の中進みます。

野火、地元の百姓が畑の収穫の後の皮などをまとめて焼く人間の生活の営みの現れ。

黒い煙を敵の狼煙とみるか、生活の野火とみるか、人間の心理は境遇で変わってしまう。
生死ギリギリを彷徨う中、信じられる味方もいない。
十字架を頼るか、上司を信じるか、仲間か?
頼りの自分自身も心許なく揺れ動く。

感傷に浸る隙のない、差し迫った戦争の悲惨さを感じた作品でした。