さて、13本目です。
1956年
芸妓さんの悲しい恋愛の美しさ、狂気を描いた泉鏡花原作の映画。
日本橋あたりの芸者の館の凛とした女主人、お孝役に淡島千景さん。
お孝がライバル視すること心優しい美しい芸者、清葉役は山本富士子さん。
お孝に惚れる赤熊は、自分の血を赤子に飲ませたり、熊の毛皮にわくウジ虫を食す強烈キャラクター。
ネタバレ
二人の芸者が想いを寄せる客、二枚目の大学教授、葛木。
葛木は、清葉に惚れているが、清葉は旦那と子供を持つ妾の身。結婚の申し出を断る。
貧しさから芸者になり、妾になり、ひなたで歩ける夫婦になれない。芸者の悲しいさ、恨めしさ、悲哀が儚くも美しい。
独り身の異様な風体の赤熊に同情するのも、芸者も同じ孤独な境遇だからか。
芸者の美しい化粧と着物と所作。
歌や三味線を弾き、現代の芸能人のよう。
旬を過ぎれば、求められることもない。
悲しい運命を分りあえるのは芸者同士。
お孝が最後に託せるのは、嫌っていた清葉だった。
時は流れ、芸者は代替わりをし、忘れ去られていく。
カランコロンとゲタを鳴らし、忘れられないよう幽霊になって現れる寂しいさ…
市川作品独特の美しいカラー映像で、物悲しさを描いた作品でした。